それぞれの事情

Aさんが、Bさんに仕事を頼んだ。Bさんから営業した(売り込んだ)仕事だ。
仕事の中身は、Bさんの持つ特殊技能を活かして、製品を作り、納めるというもの。
それまでの仕事の実績から考えて、1つ目を1週間あとに、そのあと1週間ごとに1つずつ、1ヶ月(4週間)で合計4個の商品を納品する、という予定が決まった。
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約束して仕事を始めたBさん。最初の1個目は“初めての仕事だから”と、一生懸命に精出して作る。
見事なできばえのものが、予定よりずっと早く、仕事開始から3日目に完成した。
Bさん、約束通りの日に、Aさんに納品する。
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さて、二つめ。かなりのできばえのものが3日で作れたことに慢心したBさん、納品の3日前まで作業を始めない。
3日前から作り出して、納品予定の日の朝に完成した。ぎりぎり間に合って、Aさんに渡す。
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そして、三つ目。前の二つがうまくできたので、安心してしまったBさん、納品の日が近くなっても手を付けない。とうとう、約束の日になってしまった。もちろん、何もできていないので、Aさんには言い訳をする。
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最後の四つ目。何だか気分が乗らない、とか、他の仕事が忙しいとか、理由にならない理由を付けてBさんはちっとも作業を始めない。約束の日になっても、やっぱり何も作ってない始末。今度もAさんに言い訳をした。曰く「あと少しで完成します。もう少し待って下さい」と。
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Aさんを言いくるめたBさんは、ようやく突貫作業を開始。たいしたできばえではなかったが、1週間後に2つの完成品を差し出した。
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納品したBさん、再び売り込み。「今回はちょっと手間取りましたが、次回からは4週間で8個作ります。また私を使って下さい」。1週間に2個作れることは、Bさん体験済みだから、こういう売り込みができるわけ。
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Aさん、もちろん断った。Aさんにとっては、Bさんは「最後の3週間で2個しか作れない」、しかも「完成した製品のできばえも平凡」な職人だからだ。
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このお話の教訓がどこにあるかってぇと、「約束は守ろうね」ってこと。
それと、「前の失敗を取り戻そうとして、できない約束をするもんじゃない」ってこと。