置き換えだけでは面白くない

最近、シリーズもののゲームを頻繁に遊んでいる。「蒸気の時代」の拡張マップ群や、「1830」「1890」などの18xx系などが中心だ。いずれも、ベースとなるゲームから派生したもので、独特のマップ構成や特殊ルールが、オリジナルとは異なる面白さを生み出している。いずれも興味深く、遊んでいても面白い。オリジナルがデザイン力を表すものだとすれば、これらの派生タイトルはディベロップ力を表していると言えるだろう。元のゲームに何を足すか、何を引くか、そのさじ加減の絶妙さが求められる。


こうした派生タイトルの中で、大失敗だったと感じているのが「新版・電力会社」の、最初に出た拡張マップだ。フランス、イタリアを表現したマップ、という地形的な面白さはあったし、初期配置される資源の数量や種類、登場する発電所の工夫などの追加ルールも興味深いものだった。しかし、これらの要素が新鮮に感じられるのは、ゲームのセットアップ時まで。実際に始まってみると、元のマップ(ドイツ/アメリカ)とまるで変わらない展開となってしまった。これでは、わざわざ拡張マップを購入する意味はない。


そんなわけで、新版・電力会社用の拡張マップの第二弾が出たという話を聞いても、最初はまったく期待していなかった。前回と同じ「ただテーマとなる国を変えただけのマップ」なら、いらないと思ったからだ。しかし、BGGなどにアップされたルールの英語訳やマップの写真をよく見てみると、前の拡張とはずいぶん違うようだった。そこで、だまされたつもりで購入してみた。


機会を得て初プレイにこぎ着けたのは、先月のこと。ベネルクス三国の方を遊んでみた。……なるほど、これは面白い。このマップが何を狙っているのか、プレイヤーにどうさせたいのか、がわかりやすいし、追加されたルールも、デザイナーの狙う方向にゲームを持って行くための効果的な働きをしている。これなら、十分に「アリ」だ。


今回の経験から得たのは、安易に「元の一部を置き換えただけの亜流」を作っても、意味がないということだ。派生版なら派生版らしく、オリジナルを超えるような箇所を提供するようにしなければ、消費者(ゲームならプレイヤー、本や雑誌なら読者、工業製品ならユーザー)からの高い評価は受けられないだろう。末端とはいえ、製造業を生業にしている者としては、感じることが多い体験だった。