第二回目セッション(リプレイ・その4)

興味のある方はどうぞ。
新章突入。

■新たな旅立ち(1日目)


夕靄が立ちこめる船着き場。「ここがそうか」「着いたわね」


ウェリントンは、フェン王国の北部に位置する自由貿易都市だ。フェン自体は王制ではあるが、王家による締め付けはそれほど厳しくはない。国内各地に点在する都市ごとに、ある程度の自治権が与えられている。ウェリントンも、その一つ。王家に連なる貴族、軍隊の司令官、裕福な商人、教会の代表者など、主立った有力者から構成される“評議会”により、都市としての運営方針が定められている。


“評議会”の有力メンバーとなっているのが、聖カスバード教会の枢機卿オーベルト。ウェリントンは聖カスバード教会の有力教区として位置づけられており、都市の中心に立派な寺院が建設されている。布教を中心とした教団活動に従事するクレリックは多く、都市内での一大勢力となっている。
彼らを束ねるのがオーベルト卿だ。30代後半という若さで現在の地位についたことからわかるとおり、極めて有能な人物として知られている。300年以上前に、聖剣イリュードを手に帝国の支配に立ち向かった伝説の聖人オルランド。オーベルトを評して「オルランドの再来」と言う人は多い。物静かな態度からは想像しがたいが、戦闘能力の高いパラディンとしても名を馳せているという。


ウェリントンの気候は寒冷。一年中、特に冬には分厚い雲が空を覆う。ウェリントンはまた港湾都市なので、冬に吹く海風は住民にとって辛いものとなる。流れの速い海流があるため、海が氷結することはない。時おり、さらに北方の地域から流れ着く流氷が、住民に春の訪れを告げる。


(続く……かもしれない)