【002】Labyrinth

・作者:フォルコ・ルンケ(Volko Ruhnke)
・対応人数:1〜2人(ソロプレイ専用ルールあり)
・実プレイ時間:90分(2人で)
・プレイ回数:13回

■ゲームの概要■

2001年9月11日、アメリカ合衆国内で同時多発テロ事件が起こった。事件以降、アメリカは中東/アジア地域における政治姿勢を強硬・先鋭化する。国際世論の後押しを受けたアメリカは、同盟諸国と共にアフガニスタン侵攻やイラク戦争に乗り出していく……。
『Labyrinth』は、2001年9月11日以降の世界の動きをテーマにした2人用のウォーゲーム/シミュレーションだ。プレイヤーはアメリカ側(US)とジハーディスト側(J)をそれぞれ担当し、世界の政治的覇権を競う。自陣営の政治的影響下にある国を一定数確保できた陣営が勝利者となる。そして、紛争が起こりそうな国を抽象的に描いた地図上で、両プレイヤーは知略の限りを尽くして闘っていく。

■1枚のカードをどう使うかがポイント■

『Labyrinth』は、いわゆるCDS(Card Driven System)の仕組みを採用している。コンポーネントに含まれているカードの総数は120枚。各プレイヤーは複数のカードを手札として持ち、2枚ずつ順番に使って効果を適用し、ゲームを進めていく。
それぞれのカードには、1〜3の数字と、特殊効果が書いてある。カードを出すときに「数値」として使うか、「特殊効果」として使うかを宣言する。両方を一度に使うことは、原則としてできない。ただし、相手を有利にする特殊効果を持つカードを「数値」として使った時は、特殊効果も発動するというルールがある。こうしたことが相まって、カードの使い道と順番に頭を悩ませることになる。

■陣営によってできることがまったく違う■

カードを「数値」として使うやり方は、US側とJ側で完全に異なる。できることも、適用の仕方も、だ。たとえば、ある国の政治体制を変えたいなら、US側は「イデオロギー戦争(War of Idea)」の実施を行うし、J側は「ジハード(Jihad)」でも「テロ計画のプロット(Plot)」のどちらでもよい。世界各地に自陣営の兵力/人的リソースを派遣する手段、US側では「展開(Deploy)」だし、J側は「移動(Travel)」だ。この他にもできることはいろいろあるが、US側とJ側ではやり方がまったく違う。
さらに、US側は原則としてカード1枚で1つの国でしか活動できないのに対し、J側は複数の国で活動が可能、といった違いもある。こうした違いを理解した上で、相手の活動を抑え、自陣営の影響力を高めていかなければならない。

■面白さがわかってくるまでに時間がかかる■

『Labyrinth』の魅力は、手札の運用に頭を使う点にある。ランダムに引いてきたカードを、どのタイミング/方法で使うか。悩んで悩んで悩んだ末に出したカードで、高い効果を出せたときの感覚は格別だ。また、会心の一手だと思って出したカードが思ったほどの効果を出せなかったときの悔しさも、面白さの一つと言える。「次は○○してやろう」「前回は△△だったから、今回は□□で……」と考える楽しさもある。
ただし、面白さを味わえるようになるまでには、時間がかかる。120枚にもおよぶカードの内容を把握してからでないと、カードの引き運だけで決まるゲームのように感じてしまいがちだからだ。これは、CDSを採用したゲームに共通の問題点だ。何度も遊べば面白いけれど、初見では何が面白いのかわからず、押し入れにしまい込まれる可能性は、ある。そこを乗り越えて数回遊べば、加速度的に面白さは増していくはずだ。

■ファイナル・コメント■

『Labyrinth』は、現代の紛争を扱ったウォーゲーム/シミュレーションとして、バツグンの面白さを持つと感じている。最初は、同じCDSを採用し、類似のテーマを持つ『Twilight Struggle』の後継と考えていたが、まるで別物だ。『Labyrinth』では、ほぼ非対称な仕組みなので、自分が持つ陣営の特徴を活かした進め方をしなければ勝てない。また、どちらの陣営にも終盤に逆転の可能性が残っている展開が多いのも、『Labyrinth』の持つ魅力だ。『Twilght Struggle』が好きな方にも、ぜひ遊んでみてほしい。