【005】Dungeon Raiders

・作者:フィル・ハーディング(Phil Harding)
・対応人数:1〜5人
・実プレイ時間:60分(5人で)
・プレイ回数:6回
・メーカー:Adventureland Games
http://www.adventurelandgames.com/

■ゲームの概要■

迷宮(Dungeon)を探索する冒険者たちの、足の引っ張り合いがテーマのカードゲーム。プレイヤーはそれぞれ戦士(Warrior)、盗賊(Thief)など、おなじみのキャラクターとなる。迷宮内で遭遇するモンスターや罠をかいくぐり、もっとも多くの財宝を獲得して迷宮から脱出することを目指す。

■パワーを使って問題解決■

『Dungeon Raiders』で探索する迷宮は、5つのフロアに分かれている。それぞれのフロアには5つの部屋がある。各部屋は、1枚ずつのカードで表現される。パーティを組んだキャラクター(プレイヤー)は順番に探索を行っていくことになる。
各部屋で起こる遭遇の内容は、カードに描いてある。大きく分けて、「宝箱」「モンスター」「宝物庫」「罠」の4種類だ。遭遇の内容に応じて、あるときは協力し、あるときは競い合い、パーティは探索を進めていく。
部屋での遭遇を解決するために使うのが、「パワー」カード。どのプレイヤーも「1」〜「5」までの5枚一組のカードを持ち、これを使っていく。もちろん、数字が大きい方が何かと有利。ただし、一つの部屋で使えるカードは1枚だけだし、一度使ったカードはそのフロアの全部屋を探索し終わるまでは再利用できない。どのカードを、どのタイミングで出すかが重要だ。
なお、通常のパワーカード以外に4種類の特殊カードもある。モンスターとの戦いにだけ使える「剣」、宝箱を開けるときに使える「鍵」、手番をパスできる「水晶玉」、フロア内の全部屋を確認できる「たいまつ」だ。これらを駆使して他のプレイヤーよりも有利な状況を作りたい。

■いやらしいモンスターと罠■

迷宮内で出会いたくないのが、モンスターと罠だ。
モンスターはプレイヤーたちのパーティを攻撃し、ケガを負わせようとする。うまく切り抜けるためには、協力して戦い、モンスターを倒す必要がある。
モンスターは複数の種類がいて、それぞれ体力と攻撃力が決まっている。部屋にモンスターが現れたら、プレイヤーたちは1枚ずつ順番にパワーカードを出していき、その数字を合計する。合計値がモンスターの体力を超えればOK。パーティは無事にモンスターを倒して先に進める。では、合計値が低かったら? その時は各自が出したカードの数値を比較して、もっとも小さな数字のカードを出したプレイヤーがケガを負う。ケガの度合いは、モンスターの攻撃力と等しい。多少のケガはガマンできる(冒険者は強いのだ)が、累計して10以上のケガを負うと、そのキャラクターはゲームから脱落する。また、探索を終えたとき、もっとも多くのケガを負っていたプレイヤーもゲームから脱落する。したがって、あまりケガをしない方が有利になる。
もう一つの罠は、キャラクターにケガを負わせたり、財宝を奪ったりするもの。こちらも各自が1枚ずつカードを出していくが、罠が発動するかどうかは「もっとも大きいor小さい数字のカード」だけで判定する。やたらに大きければいいわけでもなく、小さければいいわけでもない。対応に困らされる、いやらしいものだ。

■欲張ると何も手に入らない■

迷宮内で嬉しいのが、宝箱と宝物庫だ。
宝箱は、カギ開けに成功すればゲームの勝利条件である財宝が手に入る。各自が出したカードの数字を比べて、もっとも大きい人が財宝を手に入れる。ただし、同点のカードを出した人が複数いた場合、山分けになってしまうことに注意が必要。たとえば、<4><2>という二つの宝箱がある部屋を考えてみる。プレイヤーが「5」「5」「5」「4」「3」とカードを出した場合、同点首位の3人は<4>の宝箱から得た財宝を山分けにして<1>ずつしか手に入らない(端数は切り捨て)。一方、「4」のカードを出した人は単独2位なので、<2>の財宝がそのまま手に入る。前の人が出したカードを見たり、後から出すカードを推察したりしながら、自分が出すカードを決めていくことが重要になるのだ。
もう一つの宝物庫は、どのプレイヤーにとっても嬉しい場所。必ず一つのお宝(特殊カード/財宝/体力回復の薬)が手に入る。

■手軽には遊べない!? 探り合いゲーム■

『Dungeon Raiders』の面白さは、プレイヤー同士の腹の探り合いにある。順番にカードを1枚ずつ出していく、という仕組みなので、それぞれが何を出したか、何を出すか、何を残しているか、といった思惑の読み合いが必然的に生じてくる。また、周りの状況を見ながら、自分だけ有利になるように立ち回ることが求められるのも、読み合いが重要になる理由だ。
『Dungeon Raiders』では、自分より多くの財宝を持っているプレイヤーがいたら、モンスターとの戦いでわざとケガをさせるように誘導したり、そのプレイヤーだけ罠に引っかからせたり、といったことができる。「たいまつ」を使ってフロア内を確認し、自分だけが“わかっている”状況でプレイする、なんてこともできる。あの手この手を使って、他の人を出し抜く面白さが、このゲームには詰まっている。

■ファイナル・コメント■

『Dungeon Raiders』は、シンプルなルールでプレイヤー同士の読み合い/出し抜き合いを表現した良いゲームだ。罠カードの記述以外、ゲーム中にカードの文章を確認する必要はなく、すぐにゲームの展開に没頭できる。そして、展開は濃密で、考えどころが多い。他プレイヤーとの競い合いをとことん楽しめる。ぜひ多くの人に遊んでほしい。
なお、ソロルールや2人対戦のルールも用意されているが、ゲームの性質上3〜5人で遊ぶのが面白い。特に5人での読み合いはしびれるので、遊ぶ機会があってメンバーが集まるなら、ぜひ5人戦をすべし!