第二回目セッション(リプレイ・その3)

少し記述スタイルを変えてみました。
興味のある方はどうぞ。



■赤い染みが落ちない(11日目)

目の前にあるのは、棺のような大きさの黒い箱。そう、すべての始まりになったあの荷物だ。トーランには「中に何が入っているのかわからない」と答えておいたが、実はすべて知っている。黒く磨かれた箱が入っていて、さらにその中には一振りのロングソードだ。


「伝説の聖人“オルランド”がどうとか言ってたな。聖剣“イリュード”の話も」
「ええ、でも魔法が込められている様子はありませんでしたよ」
「手紙の方は魔法語だったわよね」
「あの“事故に見せかけろ。教団の関与を知られるな”ってやつ?」
「大した剣じゃないように思えるんだけどなぁ」
「どちらにしても、私たちには扱い切れません。ウェリントンから来る人たちに渡したらどうでしょう?」
「そうだな。封印も元通りにしたし、手紙以外は渡してしまおう」


そんな話をしていると、寺院の入り口に人の気配。
「しまった! この様子を見られると一騒ぎ起きてしまうぞ」
村人の先に立ち、寺院に一歩足を踏み入れたのはトラク
「いや、これは、あの」と言いよどむクナルトを制して、うなづきかける。おもむろに後ろを振り向き「村の衆、司祭様はご病気でお亡くなりになられた。葬儀は今夜だ」。トラクの声にうなづき、散っていく村人たち。
「どうなってるのよ? そんなに嫌われていたの、トーランって」
「何か事情があるんだろ。俺たちにとっては、ありがたい話だが」


 “オルランド代理人”が乗った船は、明後日にはシャプシュの村に着くという。村人たちは司祭の葬儀や寺院の片付けに大忙しで、話を聞く余裕などなさそうだ。クナルトはトラクを誘って村の外の探索に付き合わせてみたが、こちらも大した情報を得られなかった。「世の中には、知らない方もいいことがあるんだ。ただ、司祭様が“ご病気で”亡くなっても、悲しむヤツはいないよ。俺の兄貴も含めてな……」。


夜の宿屋。
「ねぇ、この村って大したものが売ってないのね。ロングボウ欲しいんだけど、交易所にはないのよ」
「チェインシャツもなかったなぁ」
「あ、チェインシャツ、トーランの着てたヤツならありますよ」
「それ、ズーブが着たら?」
「洗っても洗っても、赤い染みが落ちない……なんてことはないわよね」
「コードの神に、祝福してもらいますよ」
「いずれにしても、だ。どこかで買い物をしなくちゃな。俺も使い魔が欲しいんだが、この村では手に入れるのが難しそうだし」
「……モートまで戻るか、ウェリントンまで行くか、だな」
ウェリントンまで行きましょうよ。報酬だってもらってないんだし」
「例の剣のことも気になりますしね。聖カスバードの勢力が強い都市らしいので、気は進みませんが」
「向こうで何があるかわからないから、それぞれ力を蓄えて、できる限りの準備はしておこう」
「テレッテ、だな」
「それ、何?」
「さっきトーランを倒した後で、頭の中で声が聞こえたんだよ」
「何かの天啓でしょうか? クナルトは信仰する神を持ちませんでしたよね。いずれかの神が、アナタに何かを伝えようとしているのかもしれない」
「“真なる中立”の神っていうと、ボカブ、オーバドハイ、ファラングンだよな。何だろう、いったい」
「そのうち、わかるわよ、きっと」
「そうかもな」


(続く……といいな)