RR(Regality & Religion):カナイ製作所・2010年

現在、もっともプレイ機会が多いゲーム。このゲームが本当に好きで、何度も、いろいろな方と対戦している。「面白い!」「素晴らしい!」といった感想だけでは物足りないので、紹介を書いてみることにした。

■概要と魅力■

『RR(Regality & Religion)』は、カナイ製作所が2010年5月のゲームマーケットで発表・販売した2人対戦型のカードゲームだ。各プレイヤーはRegality(王権)またはReligion(宗教権力)を代表する役割を演じ、とある王国内での勢力を競う。ゲームに登場する王国は、3×3マスのグリッドとして表現されている。ここに自分の配下を表す人物や施設を配置していき、自陣営の勢力を伸ばしていく。終了時に相手より大きな勢力を持ち、王国を支配することが目標だ。
勢力争いに使うのは、各プレイヤーが持つ6人の人物カードと1枚の施設カードだ。交互に行う手番で持っているカードをのうち1枚を王国に配置し、自分の勢力範囲とする。王国内にカードを置く場所がなくなったら、ゲームは終了。その時点で自陣営のカードをより多く置いていた方が勝利する。限られた範囲内で配置したものの数の多寡を競う、という意味では、『囲碁』に近いプレイ感となっている。
各カードはそれぞれ特殊効果を持つ。大きく分けて、隣接する相手のカードを破壊するもの、人物を寝返らせて自陣営に取り込むものの二つがある。どのカードを破壊/寝返らせるかという効果範囲はカードごとに異なっていて、どの順に、どこに出していくかがプレイヤーの考えどころになる。お互いが利用できるカードは常に公開したままなので、非常に悩ましい。能力が異なるものをうまく組み合わせて利用していくという点で、このゲームは『将棋』や『チェス』に近いプレイ感も持つ。
1戦あたりのプレイ時間は、よほど長考しない限り10〜15分程度。短い時間で濃密なプレイ感を味わえるのは大きな魅力だろう。


『RR』の魅力は、少ないカード/短いプレイ時間でありながら、展開のバリエーションが豊富なことだ。相手と自分に残ったカードの効果、盤上の状況によって、最善と考えられる手は変わってくる。また、将来に備えた布石を打つことも重要だし、あえてカードの特殊効果を発動しない(ルール上、可能)という捨て石を置くことも一つの戦い方となる。一戦ごとに、複雑な駆け引きが楽しめるのは素晴らしい。
もう一つの魅力は、考えどころがわかりやすい、という点だ。戦い方のバリエーションは豊富でも、ボードは狭く、カードは少ない。「このカードは出せない」「ここには置けない」と消去法で検討していくやり方でも、ゲームを楽しむことができる。集中すべきところがわかりやすいのは、とても嬉しい。
さらに、あまり深く考えずに進めていても思わぬ好手で逆転勝ちを収めたりすることもあって、気軽に遊ぼうと思えば遊べる懐の広さもある。
こうした点が相まって、『RR』は私を惹き付けて離さない。この先も永く遊んで行けそうなタイトルだ。

■カード評価など■

『RR』には、6種類(+1種)の人物カードと1種類の施設カードが登場する。それぞれのカードについて特徴などをまとめてみる。名称はRegality(王権)/Religion(宗教権力)の順に記載した。なお、個々のカードが持つ特殊効果については、ゲーム添付のルールを参照してほしい。

<魔術師/修道士>

相手の勢力を除去するカード。効果範囲がやや特殊なため、序盤に使われるプレイヤーが多かった。ただ、配置する場所によっては「姫/聖女」や「王妃/枢機卿」に対する予防、および自分が配置するときの布石にもなるため、私は中盤まで手元に置くことを好んでいる。

<将軍/聖騎士>

相手の勢力を除去するカード。自分が配置したいカードのための「地ならし」として配置することが多い。何度か戦ってクセがわかった相手に対しては、「王/教皇」を序盤に使って油断させておき、このカード(か、魔術師/修道士)で逆転を狙う、という戦法を採ることもある。

<王/教皇

相手の勢力を除去するカードの一つ。効果範囲の広さから、中盤〜終盤まで手元に温存されていることが多い。確かに、このカード+「王妃/枢機卿」+「姫/聖女」の組み合わせは終盤の逆転劇に必須といえる。ただし、温存しすぎると、最後の1枚は除去の効果を発動できないというルールに抵触する可能性もある。

<大臣/司教>

相手の勢力を寝返らせるカード。効果対象となるカードは1枚だけだが、「王妃/枢機卿」「姫/聖女」よりも使い勝手がよい局面もある。序盤で使って相手の“大駒”を封じることも可能。

<王妃/枢機卿

相手の勢力を寝返らせるカード。一度に2枚のカードを効果の対象にできる“大駒”の一つ。これまでの対戦経験では、最終盤まで残されることが多い。確かに効果は強烈で、盤面に与えるインパクトは大きい。ただ、配置する場所によっては強さを発揮できない可能性もある。使いどころは意外に限られている、というのが、個人的な印象だ。

<姫/聖女>

相手の勢力を寝返らせるカード。一度に2枚のカードを効果の対象にできる“大駒”の一つ。「王妃/枢機卿」よりも最大限の効果を発揮できる可能性は高いと感じており、個人的には最強のカードではないかと思っている。もちろん、この手の“大駒”は、終盤の爆発力を選ぶか、序盤にうまくさばくか、の見極めが重要で、必ずしも温存する戦法が強いわけではない。

<城/城塞>

唯一の施設カード。盤上に不可侵の拠点を作れるため、非常に強力。また、一種の“手抜き”として使うこともできる点も、このカードの強さにつながっている。このカードをどこに置くか、いつ置くかが、勝敗を決めることは多い。『RR』に『リバーシ』の要素を強く感じるプレイヤーは、中央に置く傾向が強い。ただ、それが必ずしも必勝法ではないことに、このゲームの深さがあると思っている。

<市民>

中立的な立場の人物を表現するカード。1枚だけ用意されていて、先手プレイヤーが盤上の任意の箇所にこのカードを配置して、ゲームは始まる。対戦経験が少なかった頃は、まっさきに除去する/寝返らせる対象となっていたが、「あえてそのままにしておく」という戦法もあることを発見。このカードに対する価値観が変わった。

■ルールの拡張/バリアント■

『RR』は基本となる仕組みがしっかりしたゲームなので、いろいろな拡張やバリアントを考えやすい、と感じている。たとえば、

  • カードの追加:「一マス置いた先を除去する/寝返らせる」カード、「相手を除去し、同時に自分も除去される」カード、などを追加することで、展開のバリエーションはさらに増えそう。
  • カードの選択方法:「両者共通の公開カードから、使うものを選ぶ」とか、「カードを山札にして、そこから○枚を手札にする。自分の手番は、手札から選択して使う」とか、「拡張カードも含めて、デッキ構築型にする」とか。

いずれも、やりすぎるとシンプルさゆえの魅力を失う可能性はある。

■戦法■

これまで、9人の方と19戦してきた。一戦終わる頃に「これ、リバーシ(オセロ)だね!」と感想を述べる方が多かった。確かに、リバーシと同じく「中に少ない石を置く」戦法は『RR』でも有効だ。
対戦回数が多い方からは、「“大駒”のさばきが重要だなぁ」という感想を頂いた。「王妃/枢機卿」「姫/聖女」の使い方を指しての発言だと思われる。この2種類のカードは強力な効果を持ち、盤上の状況を一度に変える可能性を秘めている。この可能性を引き出すには、そのための下地を作り出さなくてはならず、将棋のような感覚が必要になる。
リバーシでもあり、将棋でもあり、そして囲碁でもあり。『RR』では、さまざまな視点からの手札/盤上評価が必要とされる。
現時点で、『RR』における戦法や解析記事が発表されたということは聞かないが、今後は定跡研究なども進んでいくだろう。