【003】どうぶつしょうぎ(Doubutsu Shogi)

どうぶつしょうぎ (Let's catch the Lion!) ボードゲーム


・作者:北尾まどか藤田麻衣子
・対応人数:2人
・実プレイ時間:15〜20分(2人で)
・プレイ回数:26回

■ゲームの概要■

どうぶつしょうぎ』は、現役女流棋士(将棋のプロ)である北尾まどかさんと、元女流棋士藤田麻衣子さんが作ったボードゲームだ。名前の通り、長い伝統を持つ『将棋』の仕組みがベースになっている。互いに4枚ずつの駒を使って戦い、二つある勝利条件のいずれかを満たすことを目指す。

■12マスの地図で、8枚の駒が争う■

どうぶつしょうぎ』は、縦4×横3マスのグリッドを描いた盤(地図)を使って対戦する。初期状態では、盤上に各プレイヤー4つずつの駒を決まったやり方で配置する。その後は、先攻プレイヤーが自分の駒を一つ動かし、後攻プレイヤーも一つ駒を動かし……という手順を繰り返してゲームを進めていく。
最初に手元に持つ4つの駒は、それぞれ特殊能力を持っている。「ライオン」は周辺の8マスに動くことができる強力な駒だ。自陣営の司令官とも位置づけられる。ゲーム中で最も重要な役割を果たす駒である。初期配置で右に位置する「ゾウ」は斜め方向に、左の「キリン」は前後左右に、それぞれ移動できる駒で、攻防の中心になる。最前線に置く「ヒヨコ」は、前方にしか進めない最弱の駒。しかし、相手陣の奥深くまで進入すると斜め後ろ以外に進める強力な「ニワトリ」に進化する。うまく使えば、一気に形勢を逆転できる。
盤上の各マスには一つの駒だけが存在できる。すでに駒があるマスに相手の動かした駒が入ると戦いが起こり、後から進入した側の勝ちとなる。勝った側は相手の駒を手元に奪い取り、後で再利用する(盤上の駒を動かす代わりに、手元の駒を盤上に置く)ことが可能だ。
これを繰り返してゲームを進めていき、相手の「ライオン」を取るか、盤上の相手側に最も近い3マスのいずれかに自分の「ライオン」を進入させた方が勝ちとなる。

■将棋を知っていれば、話は早い……のか?■

『将棋』のルールを知っている人なら、上の説明は不要だろう。『どうぶつしょうぎ』は、元の将棋を簡略化してルールにいくつかアレンジを施したゲームだ。
どうぶつしょうぎ』は、4×3の盤上で、双方4つの駒を使って争う。ライオンは「玉」で、ゾウ/キリンは「角行」/「飛車」、ヒヨコ/ニワトリは「歩兵」/「金将」だ。ただし、ゾウとキリンは一歩ずつしか進めず、ヒヨコ以外の駒に「成り」はない。また、「二歩」にあたるヒヨコの二枚打ちも可能となっている。
勝ち方は将棋と同じ。相手の玉であるライオンを取る/詰めるか、入玉すればOKだ。

■誰にでも受け入れられるかどうかは疑問■

作者によれば、『どうぶつしょうぎ』は将棋の入門編として考案したそうだ。確かに、このゲームを遊ぶことで将棋の基本的な考え方や指し方を身につけられる。将棋を遊ぶ一つ前のステップとして、勧められる。
ゲームを手に入れてから、20回以上遊んでみた。下は3歳児から、上は70歳超えまで、10人以上の方と対戦している。かなりの割合で「面白い! もう一回!」という高評価を得ることができた。ただし、将棋をよく知っている父からは「駒の動きが本物と混同しやすい」という指摘を受けた。また、小学2年生と5年生の姪/甥には非常に受けが悪かった。「誰かと直接闘うのはキライ」だそうだ。必ずしも、誰にでも勧められるゲームというわけではなさそうだ。
もちろん、私にとっては、とても面白いゲームだった。以前から将棋は好きで、『囲碁将棋チャンネル』などの放送もよく見るし、各種の観戦記事を読むのも好きだ。しかし、本当の将棋を指すことは苦手。先を読む力や大局観がないこと、指せる手の選択肢が多すぎて悩んでしまうこと、などが理由だ(ちょっと情けないけど事実)。そんな私でも『どうぶつしょうぎ』なら「先を読むこと」「次の一手を考えること」が十分に楽しめる。私にとって、これは「将棋の簡易バージョン」ではなく「一つの独立した傑作ゲーム」である。同じように考えている方には、どんどん勧めていきたい。

■ファイナル・コメント■

どうぶつしょうぎ』は、対戦型の思考ゲームとして広く勧められる作品だ。比較的短時間で、考えることの楽しさと、他人と思考を競うことが楽しめる。私のように、将棋を「下手の横好き」としている人には、特にオススメしたい。
なお、本作品をシリーズ化した『おおきな森のどうぶつしょうぎ』も販売されている。こちらは将棋本来のルールで遊べるので、次のステップアップを考えている人は遊ぶことを検討するのもいいだろう。ただし、私は買わないし、やらない。難しすぎるから(笑)。個人的には、5×5くらいの大きさで競う『中くらいの森のどうぶつしょうぎ』が出て欲しいところだ。それなら何とかなりそうな希望も持てるので。