平日二人ゲーム会

旅団長と。
Decicion Gamesの『Modern War』誌、第6号の付録である『Decision:Iraq』を遊ばせてもらう。


■Decision:Iraq/初プレイ/2人/サドンデス敗戦/37分■

『Decision:Iraq』は、2003年にアメリカを中心とする多国籍軍(MNF)が侵攻して以降のイラク情勢がテーマ。正規の軍隊による戦いだけでなく、各種の武装勢力が展開するゲリラ戦や情報戦も含んだ仕組みになっている。
マップは、複数のエリアと、それぞれをつなぐ接続路で表現してある。各エリアには勝利得点が設定してあって、支配している陣営は毎ターンごとにそのポイントを累積していく。そして、ゲーム終了時にお互いの得点を見て、その差で勝敗とそのレベル(辛勝とか圧勝とか)が決まる。ただし、ゲーム中の行動によって勝利得点を喪失することもあり、その場合には累計しているポイントから引いていく。ゲームのいずれかの時点で、勝利得点が0以下になってしまうと、その陣営のサドンデス敗戦が決まる。


というわけで第1戦。私はCOIN(Counter Insurgency)側を担当。配下のMNFとイラク政府軍を指揮して、反政府勢力(Insurgency)を締め上げる。……はずが、状況はだいぶ予想と違っていた。
このゲーム、各エリアは大きく分けて二つの領域に分割できる。一方は軍事活動に適した「Open」領域で、もう一方は地域住民の支持などを抽象的な概念で表現した「Infra」領域だ。エリアを支配するには、すべてのInfra領域に自陣営の部隊を置く必要がある。そして、いったんInfra陣営に部隊を置かれると、その駆逐は難しい。旅団長指揮下の反政府勢力は、初動で各所のInfra領域を奪取。その駆逐に時間をかけている間に、他エリアで市民活動(Civic Action)が頻繁に行われ、あっという間にCOIN側の勝利得点は減っていった。
気がつけば、わずか2ターン目でのサドンデス敗戦。うむむー。



初期配置。


■Decision:Iraq/2回目/2人/サドンデス敗戦/74分■

気を取り直して、2戦目。担当は初戦と同じままだ。
『Decision:Iraq』の特徴的なルールの一つが、3種類のCRTとその結果だ。攻撃側のプレイヤーは、攻撃を解決するときに「市民活動(Civic Action)」「ゲリラ戦(Guerrilla)」「キネクトKinect=Kinetics+Connectionの造語?)」のうち、いずれかを選べる(キネクトを選ぶための条件は、やや厳しい)。CRTの結果はそれぞれ異なるため、戦局に合わせて選び取っていくことになる。
CRTによる結果は、「誰が加点するか」「部隊レベルの上下はどうなるか」の組み合わせになっている。たとえば「AL1」なら、「攻撃側が、戦闘の行われたエリアの勝利得点を加点する(or相手からその分のポイントを喪失させる)」+「攻撃側部隊のうち50%は、部隊レベルが1段階下がる」だ。
この結果表が、実にいやらしい。一般的なウォーゲームのCRTは、「勝った方の総取り/敗者は全て失う」形式になっている。攻撃を仕掛けた側が勝てば、勝利点も、部隊レベルも、ともに上昇するはず、というジョーシキは、このCRTを見ると“思い込み”に過ぎないことに気づかされる。「勝ったけど、部隊の士気は下がった」「部隊は消滅したけど、勝利点だけは獲得した」なんてことが頻発する。


2戦目は、そんなCRTに翻弄された(ように感じた)戦いだった。今度は4ターン目までゲーム時間は伸びたものの、結局はサドンデス敗戦。「市民活動(Civic Action)で低比率の攻撃を仕掛けて、部隊損失と引き替えに勝利点を稼いでいく」「ゲリラ戦で部隊の士気を高めて戦闘力を上げ、そののち大規模なキネクトで敵を殲滅する」などなど、状況に応じたいろんな手法が採れないとダメ、だね。

■Decision:Iraq/3回目/2人/途中終了/124分(5ターン目終了まで)■

陣営変更。旅団長がCOIN側を担当した。


COIN側は、最初の2ターンがとても難しい感じがする。ゲームスタート時の勝利点、COINは30点、反政府勢力は70点だ。エリアの勝利得点が大きいところで8点あることを考えると、ちょっとした戦闘のミスが命取りになりかねない。しかも、このゲームでは「勝利点を支払って各種ユニットを購入する」仕組みを採用している。一方のプレイヤーにバランスが傾き始めると、止めるのは難しい。初動には、慎重かつ大胆な行動が必要になってくる。
一方、そこを乗り越えると、COIN側はラクになってくる。個々の部隊の戦闘力/行動力は高く(特に後者は重要)、ちょっとやそっとでは一度支配を確立できた地域を喪失することはないためだ。


というわけで、「相手をラクにしてしまった」私が敗色濃厚なところで、時間切れ終了となった。



焦点になるのはBaghdadの支配。

■感想と評価■

「ゲーム開始時点の状況が、プレイヤーごとに異なる」「勝つための手筋がいろいろある」「お互いの手番にできることの選択肢が違う」ゲームは大好き。なので、『Decision:Iraq』も大好き。もっと遊んで、最後までいくとどうなるのか(オレの場合、最後まで到達するにはどうするか、が重要そうだけど:笑)を見てみたい。私の中では、『Labyrinth』には劣るけど、非対称戦の佳作、という位置づけ。クロノノーツゲームに、すばらしい日本語訳ルールがあるから、遊ぶための敷居ハードルが低いのも◎。


★評価:毛蟹