【028】マリア(Maria)
・作者:リカルド・シベール(Richard Sivel)
・対応人数:2〜3人(3人を強く推奨)
・実プレイ時間:300分(3人で)
・プレイ回数:6回
■なかなか見ない、3人用の好ゲーム■
3はキライだよ〜 いつもいつも〜 うまくいかないよ 3はキライだよ〜♪(「3」はキライ!:宮川泰)
ボードゲーム/カードゲームを遊んでいて困るのは、3人用の好ゲームが少ないことだ。もちろん、2〜5人など幅広い人数で遊べるゲームは多い。だが、3人だとどうしても「2人が共同して、1人と対抗する」という図式が生まれやすい。ゲームの途中で決まった図式が変化することはあまりなく、展開が固定化しやすいのだ。
『Maria』は、そんなボードゲームの中でも希有と言える3人用の名作。1740〜1748年にかけて行われたオーストリア継承戦争がテーマのウォーゲームだ。プレイヤーは、オーストリア、フランス+バイエルン、プロイセン+ザクセン+国事軍(Pragmatishe armee:イギリスやハノーバーの連合軍)を、それぞれ担当する。
■3人の駆け引きを加速するマップ■
マップには当時のヨーロッパ大陸が描いてある。東西はトロワ(Troyes)−ウィーン(Wien)、南北はベルリン(Berlin)−ミュンヘン(Munich)だ。主要な都市や街と、それぞれを結ぶルートが描いてあり、部隊の移動を規定する(ポイント・トゥ・ポイント)。マップはさらに、いくつかのポイントを含む“エリア”に分割してある。各エリアにはプレイング・カードの“スート”が割り当ててあり、戦闘解決時のカギになる。
Mariaの最大の特徴は、このマップ構成にある。マップ全体は大きく東西の2つに分割してあり、西側ではフランスvs.オーストリア+国事軍の戦いが、東側ではオーストリアvs.フランス+ババリア+プロイセン+ザクセンの戦いが、それぞれ展開の中心になる。プロイセン+ザクセン+国事軍を担当するプレイヤーは、西側ではフランスと敵対しオーストリアと協調するが、東側ではその逆だ。3人ゲームにありがちな「協調関係の固定化」を防いでいる。
■簡単だけど難しい戦闘システム■
戦闘システムは、簡単だが面白い。プレイヤーが指揮する軍勢は、司令官駒だけをマップ上に置き、指揮下にある兵員数(最大8戦力)は秘匿情報。戦闘発生・解決時以外は、他のプレイヤーには一切公開しない。戦闘が発生したら、両プレイヤーは手札をプレイする。「戦力数+出したカードの数値」を比べ合い、勝敗と損害数を決める仕組みだ。出せるカードは戦場に合致する「スート」のみ。いくら兵力が多くても、戦場に適合しているカードがなければ敗退してしまう。「守りたい場所を守れない」「攻めたいけど、カードがない」などの“ままならなさ”を存分に味わえるだろう。
なお、手札はターンごとに補充されるが、国によって補充枚数が異なる。各スートをバランス良く持てれば最高だが、時には1スートに偏った少数の精鋭軍に負けることもある。そこもまた面白い。
■最初から最後まで緊張感が持続する■
Mariaのルールは、以上のふたつに移動/補給/支配権の移動/政治情勢(上級ゲームのみ)を加えて構成されている。ウォーゲームにしては短く、口頭での説明も15分程度でOKだ。ルールの習熟に時間はかからず、すぐにゲーム展開に没頭できる。これも魅力。
もちろん、勝ちを収めるのは難しい。ゲーム中に考えなくてはならないことは多く、戦力や手札など秘匿情報が多くて心理的な読み合いも必要になるからだ。時間をかけた分だけの面白さ、達成感は味わえるが、長時間続く緊張を面白がれる人でないと向かない。
3人向けのウォーゲームとしてはかなりの傑作なので、興味のある人にはぜひ遊んでみてほしい。また、ユーロゲーム的なルールが多く使われているため、ウォーゲームはあまり遊ばない、という人にもオススメできそうだ。