【030】コープス・コマンド:ドーンズ・アーリー・ライト(Corps Command:Dawn's Early Light)



・作者:ピーター・ボグダサリアン(Peter Bogdasarian)
・対応人数:2人
・実プレイ時間:150分
・プレイ回数:5回

■いまはむかし……の物語■

かつて、ヨーロッパ大陸の東には、ソビエト社会主義連邦共和国ソ連:CCCP)という国家が存在していた。アメリカ合衆国(USA)と覇権を競っていたソ連は周辺の国家と軍事同盟を結び(あるいは締結を強制し)、「ワルシャワ相互防衛援助条約機構軍」を創設した。これに先立つ1944年に、アメリカは西側諸国と創設した「北大西洋条約機構軍」に対抗するためだ。両軍事機構は、分割統治中の東西ドイツ国境を筆頭に、世界各地で一触即発の状態になっていた。
1985年、ワルシャワ条約機構軍は突如西側への侵攻を開始する。奇襲を受けた北大西洋条約機構軍は、各地で次々に蹂躙されていく。ワルシャワ条約機構軍の先鋒は、とうとう西ドイツ南部に位置するアイゼンバッハの回廊部(Eisenbach Gap)にたどり着いた。ここを抜かれると、背後のフランス/イタリアまでが危機にさらされる。この地にいる北大西洋条約機構軍アメリカ軍/西ドイツ軍)は、さらなる戦火の拡大を阻止できるだろうか?

■ファイアパワー方式を使った作戦級(説明終わり)■

『Corps Command:Dawn's Early Light』は、Eisenbach Gapでの攻防を扱ったウォーゲームだ。ワルシャワ条約機構軍は突破を目指し、北大西洋条約機構軍はそれを阻止することが目標となる。
 ゲームの仕組みは、多くの作戦級ウォーゲームとほぼ同じ。自分の手番では「移動−攻撃」を行い、相手も同じことをしたら1ターン(このゲームでは「インパルス」)が終わる。一定ターンごとに増援や補充をチェックして、規定ターンが来たら終了だ。最後に地図上の重要拠点をどれだけ占領しているか、地図外に自軍兵力をどれだけ突破させたかをチェックして、勝敗が決まる。
1ユニットの規模はおおよそ1個大隊〜連隊。戦闘は「ファイアパワー方式」の変形で、攻撃側のダイスロール結果と、防御側スタックの一番上にあるユニットの防御値で判定する。補給のルールは(補充時を除き)なし、だ。

■「アセット」と「アクティベーション」がキモ■

よくある素材を組み合わせ、“味付け”を施すことで独自のものに仕上げる。簡単なようで、難しい。このゲームでは「アセット」「アクティベート」という要素を加えて、面白さを生み出している。
ゲーム開始時、各プレイヤーには何枚かの「アセット」チットがランダムに渡される。各チットには使った時の特殊効果(増援が得られる、空中機動部隊が使える、など)が記載されていて、適切なタイミングで利用することでゲームの流れを変えられる。使える枚数や効果は国籍によって違い、ゲーム展開を多様なものにしている。
ターンごとに両プレイヤーがダイスを振り合い、先手/後手と行動できるユニット数を決めるのが「アクティベーション」だ。動けるタイミング/動ける部隊が決まっていないため、展開は流動的になる。また、場合によっては自軍ユニットがすべて行動不能に陥ることもあり、ダイス振りは“熱い”。

■Totensontagのことは忘れて下さい■

以上のルールが相まって、遊ぶたびにゲーム展開はだいぶ異なる。1回のプレイ中ずっと、ワクワク感・ドキドキ感を味わい続けることができる。基本となるルールはわかりやすいので、こうした感覚を味わいながら勝負に集中できるところは、大きな魅力だ。
難点は特にないゲームだが、一つだけ注意が。このゲーム、『Corps Command』というシリーズの一つで、第二次世界大戦北アフリカ戦線を扱った『Corps Command:Totensontag』の後継にあたる。Totensontagの方にはアセットのルールがなく、展開の流動性はやや低め。「Dawn's Early Lightは面白かった。同じシリーズのこっちも面白いに違いない!」と期待して遊ぶのは、ちょっと危険かも(経験者談)。