Wizardryの話・その4

(承前)
少し前、国内ソフトメーカーによる『発展型・Wizardry』のリリースブームと呼べる時期があった。この時期に登場したタイトルは、アスキーによる『外伝シリーズ』とは異なり、オリジナルのシステムをベースにしながらも大胆に新しいものを取り入れていた。たとえば、『エンパイア』では種族/職業の増加に加え「通常武器の効かない敵」を加えることで戦闘に緊張感をもたらしていたし、『サマナー』では新職業を追加・クローズアップすることによって新しいタイプのWizを作り出そうとしていた。
こうした試みは、成功したものもあれば、失敗したものもあった。私が成功だと思ったのが、アトラスの手になる『BUSINシリーズ』である。


BUSINシリーズ』は『WizardryAlternative』という名称でリリースされたPS版ソフトだ。このタイトルで加えたられた新要素には、さまざまなものがあった。職業の増加やストーリー性の重視といったものもあったが、私が惹かれたのは二つの要素、すなわち「ダンジョン構造の変化」と「アレイドの導入」である。
BUSINシリーズでは、冒険の舞台となるダンジョンに大きな構造上の変化がもたらされた。迷宮は複数階層で構成されているが、各階層は「1フロア」ではない。一つの階層の中に高さの概念が導入され、立体交差や飛び降りられる崖といった要素が加えられている。実はこれ、他の発展型・Wizardryにありそうでなかったもの。曲線も効果的に取り入れられたマップ構造は、マッピングマニアの私には“描き甲斐”のあるものに見えた。
もう一つの「アレイド」は、英語でAlliedと表記される。直訳すれば「協同戦術」だろうか。パーティを構成するメンバーのうち複数が一つの戦術を選択。それによって、範囲攻撃ができたり、二人で一体のモンスターに強打を与えたり、敵の魔法から防御するバリアを張ったり……といった行動ができるようになっていた。複数の制限があるため、スタート時点で使えるアレイドの種類は少なく、冒険が進行することによってさまざまな作戦が取れるようになっていく。
なお、本編クリア後の追加ダンジョンという新要素もある。私はそういったことにまったく興味がないので遊んではいないが、それもやり込み型のプレイヤーには面白い要素なのかもしれない。


BUSIN』には、こうした二つの魅力的な要素があった。いずれも、従来のWizardryにはなかったもので、しかも「あると嬉しい」と感じられるものだった。階層の複雑化によってマッピングは楽しくなり、アレイドの導入でモンスターとの戦闘に深みが出た。グラフィックやサウンドなど、本家のWizardryとは似て非なるタイトルだが、こうした新要素に惹かれて、長時間プレイすることになった。
じっくり取り組んでみると、『BUSIN』にはまだ魅力的な要素が詰まっていることがわかった。特に感心したのが、シリーズ第2作目となる『BUSIN0』のB6F(かB7F:未確認ですみません)。この階層をクリアするためには、いったんマップ全体の構造を把握した上で、特定ポイントを一定時間の間に回る必要がある。途中で出会うモンスターとの戦闘は回避すべきなのかどうなのか、最短のルートで回るにはどうすればいいのか……などなど、心地よい緊張感と作戦を練る楽しさが味わえた。


というわけで、一時期『BUSINシリーズ』はかなり遊んだ。国内で開発されたWizardryシリーズの中では、もっとも好きなものだと言える。3作目の登場を期待して待っているが、なかなかリリースされないのが残念だ。


以上、4回に渡ってWizardryの話を書いてみた。『五つの試練』に出会って再燃したWiardryへの熱意、まだまだ続きそうではある。