【013】皇帝シーザー(Caesar at Alesia)
・作者:ロバート・ブラッドレイ(Robert Bradley)
・対応人数:2人
・実プレイ時間:360〜420分
・プレイ回数:記録なし(20回以上は確実)
■これ以上ないシンプルな勝利条件■
たった一つの駒を、地図中心にある城塞から盤外に出す。それが、包囲戦を扱ったウォーゲーム『Caesar at Alesia』の勝利条件だ。
テーマはローマのカエサルが行ったガリア遠征。紀元前52年、ローマ軍はガリアの司令官ウェルキンゲトリクスが立て籠もった要害都市アレシアを包囲した。ガリア側は状況を打開するため、周辺のガリア軍に解囲を要請。アレシアに籠もる8万人と解囲軍25万の共同攻撃によって、6万人のローマ軍に戦いを挑んだ。ローマ側もこの構成は予測済み。3週間に及ぶ工事によりアレシア外周には土塁、堀、監視塔など、強固な陣地を築いてあった。とはいえ、兵数は劣り、“逆包囲”を受ける状況になっている。この戦いで勝利するためには、ウェルキンゲトリクスの首級を上げてガリアの士気を崩壊させる必要がある。最後の勝利は、どちらの手がつかむのか……。
■自由度の高いガリア軍と、精強ローマ軍の戦い■
マップの中心にはアレシアの街がある。ガリア側のプレイヤーは、ここに配置するウェルキンゲトリクスの駒を規定ターン内に盤外に脱出させることを目指す。アレシアに初期配置された軍勢に加え、盤外から多数の解囲軍も登場する。解囲軍の侵入経路は自由に決められ、盤外では秘匿移動もできるため、戦略的な自由度は高い。
一方のローマ側プレイヤーは、アレシア周辺に包囲軍を配置して始める。駒の総数はガリアよりもずっと少ないが、個々の戦闘力は高い。さらに、アレシアの周辺に築いた土塁や堀、監視塔(長距離攻撃が可能)を使い、ガリア軍の数的優位を相殺、突破を阻止する。
それぞれのプレイヤーは、自分の手番で「移動−戦闘」の順に行動する。戦闘は“マストアタック”。相手の駒に隣接していたら、必ず攻撃を仕掛けなければならない。ウェルキンゲトリクス駒は戦闘力を持たず、ローマ側の駒に隣接すると自動的に敗北(死亡、あるいは拘束)となる。ちょっとした部隊移動のミスや、戦闘結果の振れ幅によって敗北という結果になりかねないため、アレシアを出るタイミングと周囲を囲む“親衛隊”の編成には神経を使う。
こうして一定ターンの攻防が終わると“夜”になり、盤上の兵力を再編成する。ガリアの駒はすべて初期配置の場所に戻り、ローマの駒は再配置が可能になる。どれだけ勝利条件に近づいていても、リセットされて再び攻防が始まるのだ。2回の攻防が終われば、ゲーム終了。前述した勝利条件に照らして勝敗が決まる。
■たった一つの駒を起点にすべてを組み立てる■
『Caesar at Alesia』の面白さは、勝利条件がシンプルであることに尽きる。どちらのプレイヤーも、ゲーム中はウェルキンゲトリクス駒の動向に集中する。すべての戦略/作戦/戦術は、この駒を起点に組み立てられ、そこに集中した駆け引きが行われる。「注目すべき箇所が絞られている」ところが、実にいい。ゲームの時間は長いけれど、それを感じないくらい「たった一駒」の動きに一喜一憂できる。
もちろん、難点もいくつかある。古いゲームのためやや入手難であること(オークションにはよく出てくるけれど)、マップ上の一部地形が見づらいこと、あっさり勝負がついてしまう可能性もあること、などだ。現代のデザイン/ディベロップ手法なら、もっと短時間で同じような興奮を味わえるゲームも作れるだろう。私はこのゲームをとても高く評価しているけれど、そこには多大な思い出補正がかかっていることは否定しない。