【047】ヘルズ・ゲイト(Hell's Gate)


・作者:フィリップ・セイバン(Philip Sabin)
・対応人数:2人(1人も可)
・実プレイ時間:120分
・プレイ回数:4回

■包囲殲滅を狙うソ連軍と、解囲を試みるドイツ軍■

第二次世界大戦 欧州戦域・東部戦線で、1944年1月に始まった激戦、いわゆる「コルスン包囲戦」をテーマにしたウォーゲーム。攻撃側のソ連軍と、防御側のドイツ軍を、それぞれのプレイヤーが担当して競う。70数個の駒、11×17インチ(B4版くらい)の地図を使うミニゲームながら、プレイ感は濃密だ。

■変則的なルールが、締まった濃密な戦いを演出する■

全8ターン、ヘクスマップ、戦闘−移動のシークエンス(二次移動なし)、戦力比で戦闘解決、ステップを除去した分だけ勝利得点……と、ベーシックなルール構成。だが、さすがVictory Point Games(褒め言葉)、あちこちに変則的な仕組みも盛り込んでいる。
「装甲/戦車部隊は、攻撃時のみ額面戦力を2倍にする」「攻撃側が自発的に1ステップを失うことで、防御側により多くの損害を与えられる(可能性がある)オールアウト攻撃をかけられる」「防御側は、退却すれば損失を無効化できる。ただし、次のターンには何の行動もできない」「コルスン周辺のドイツ軍ユニットは、一定ターンまで動けない」「ゲーム終了時に、マップ西方に連絡線が引けないドイツ軍ユニットは壊滅扱い」、などなど。
これらのルールが相まって、ミニゲームながら深みのある作品(=じりじりした展開が続く)ゲームになっている。

■攻撃側のソ連軍、手なりではたぶん勝てない■

『Hell's Gate』は、初見だとだいぶ地味なゲームだ。ユニットの移動力が小さいため、マップのあちこちを快速部隊が走り回る、という展開にはならない。いくつかの緊要地形を巡る駆け引きが、面白さの大半を占める。数少ない部隊を的確に運用しながら、こっちで一点、あっちで一点……と細かなポイント(勝利ポイントのことではない)を積み重ねて勝利に近づく、というゲームだ。細かなルールの適用に気を取られず、対戦相手とギリギリのチェスマッチをしたい、という人/タイミングには、合っていると思う。
難点は、バランスに疑問点があること。攻撃側のソ連軍を担当すると、ストレスが溜まるかもしれない。ゲームに慣れてきたら、「始める前に、担当する陣営をVPで競る」という遊び方にすると、この問題が解消できそう。試してみてくださいな。