【010】スペース・エンパイアーズ:4X(Space Empires:4X)

・作者:ジム・クローン(Jim Krohn)
・対応人数:2〜4人
・実プレイ時間:150〜240分(2人で)
・プレイ回数:6回(すべて2人プレイ)


■他人の考えを読むことが中心のゲーム■

 宇宙が舞台の“4X”ゲーム。プレイヤーは自分の本拠地となる恒星系を起点に、広大な宇宙空間を探索/支配して帝国を築いていく。さらに他プレイヤーの帝国を殲滅し、宇宙で最大最強の勢力になることを目指す。……実に“スタンダード”なゲームと言える。
 このゲームで面白いのは、プレイヤーごとに違う戦略を採れるようになっていて、相互の駆け引きが楽しめるように作られていることだ。ゲーム中に各プレイヤーが選び取れる選択肢は多い。たとえば、自分の戦力となる宇宙船(戦闘艦や民間船)。前提となる技術開発も含めて、プレイヤーは自由に設計・建設できる。戦術や作戦に合わせて作れるので、プレイヤーによる考え方の差が出てくる。技術開発、宇宙開発などはすべて秘匿情報なので、相手が何を考えているか読むことが重要になってくる。ルール上の縛りは少ないので、考えること、考えを読むことに集中できる。

■ほとんどの情報は「自分にしかわからない」■

 ゲーム開始時、ボード上のヘクスにチットをランダムに置いていく。このチットは、各恒星系に何があるかを示している。入植可能な惑星(Planet)、資源のみ産出する星(Mineral)、小惑星帯(Asteroid)などだ。各陣営が最初に勢力下に置いている場所についてはチットの内訳が決まっているので、「勢力下の宙域を全部探索すると、どこまで発展できるか」はわかっている。“序盤でいい星が引けないと、ズルズルと負けていく”という事態を、ある程度は予防しているのだ。また、最終的にどのプレイヤーも同じ経済力になるので、他プレイヤーに勝つためには「何をどう伸ばすか」という戦略面での駆け引きのうまさが重要になるわけだ。
 なお、各陣営の勢力圏は、深宇宙(Deep Space)によって区切られている。ここにはプレイヤーごとに割り当てられたものよりも強烈な効果を持つチットを配置する。異星人(Alien)が出てきたり、通常よりも多くの資源を産出する星(Mineral)があったり、などなど。このチットは完全にランダムに選んで配置するので、宇宙全体の様相は自ら探索して確認していくしかない。深宇宙にいつ乗り出していくか、も、プレイヤーの考え方に差が出るところだ。

■マルチゲームとして遊ぶと、評価は下がる■

 ある程度の“平等さ”を確保することで、プレイヤーによる考え方の差をゲーム中に出しやすくし、その優劣を競い合うようにした。それが、このゲームの面白さだ。「序盤の経済力重視。技術開発は後回し」「序盤から偵察艦を多数出してラッシュをかける」「溜めて、溜めて、強力な戦艦を作ってからが勝負」などなど、“自分の戦略/作戦で宇宙を支配する”ところが難しくも面白い。戦略から戦術まで、さまざまな段階で自分の考えを練ることが好きだという人には、特にオススメだ。
 ただ、このゲームはブックキーピングが面倒くさい、という難点もある。すべての情報が完全秘匿なので、ルールに精通している人同士で遊んだ方がいい、という課題もある。さらに、他者が秘密にしていることの内容を読み合う要素が面白さの中心なので、3〜4人で遊ぶと今ひとつ、かもしれない。そんな障害を乗り越えられれば、とても楽しい世界が広がっているのだが……。