【015】伝説のかけら〜サーガ〜(Saga)

・作者:中村聡(Satoshi Nakamura)
・対応人数:3〜6人
・実プレイ時間:25分
・プレイ回数:記録なし(数十回)

■長い前置き、あるいは思い出話■

むかし、レースに出ていたことがある。格式も何もない草レースだったが、真剣に取り組んだ。1ヶ月間、仕事をほったらかして毎日練習に通った時期もある。
最初のうちは体力がないので(たぶん、サーキットでの“ふるまい方”が身についていなかった)、練習は午前で切り上げて午後は車で熟睡していた。徐々に慣れてきて練習時間いっぱいまで走れるようになったけれど、渋滞する高速道路を運転して買える自信はなかった。そこで、サーキット近くにある公共の入浴施設で昼寝をしてから帰るようになった。同じチームの仲間と、あるいは知り合いと一緒に練習へ行った時も、入浴してから帰ったものだ。
『伝説のかけら〜サーガ〜』は、その頃に施設の大広間でよく遊んだカードゲームだ。こういうゲームは初めてだったので、3人で何度も遊んでいた。

■ゼロにするか、溜めるか!? 選べる勝利条件■

ゲームの目標は、最初に配られた手札「を、すべて場に出す」か「で、役を作る」こと。まったく逆の方向性を持つ勝利条件のうち、どちらを目指してもいい、というところが特徴的だ。
 最初に一定枚数のカードを配ったら、あとは手番順に進めていく。自分の手番でできるのは「カードを場に出す」か「カードを山札から引く」のいずれか。どちらの勝利条件を達成したいかで、やりたいことが変わってくる。また、同じ種類のカードは一度に何枚でも場に出せるので、「役を作るために手札を増やしている……と見せかけて、すべて場に出す勝利条件を達成する」こともできる。
ほとんどのカードには、場に出したときに発動する特殊効果が描いてある。手番の逆転やスキップ、他者のカードを奪う、など、軽微なものから強烈なものまで効果はいろいろだ。
こうして手番を繰り返し、誰かが勝利条件を満たしたら1回のゲームは終了。各自の得点を記録して、次のゲームに進む。最終的に、累計得点が50点を超えたプレイヤーが勝利する。

■不思議な感覚に慣れてからが本番■

このゲームの面白さは、相反する2つの勝利条件が用意されていることだ。最初に配られた手札、山札から引いたカード、他プレイヤーの動向。それらをすべて見ながら、勝利条件を達成することを目指す。状況の変化によって当初の方針を変更できる臨機応変さを求められるわけだ。対戦相手を幻惑するように手番を消化するドキドキ感や、特殊効果をうまく発動できたときのワクワク感は強い。セッションでのアドリブを楽しむような感覚が味わえるだろう。そんなところが、長い長い耐久レースでの駆け引きが好きな私(たち)には受けた。一時期は、入浴するのもそこそこに遊び始め、気がついたら閉館時間、ということもあったほどだ。
もちろん、難点もある。勝ち方が二通りある、というのに慣れるまでは時間が必要だろうし、カードグラフィックはおせじにも美しいとは言い難い。また、特殊効果のあるゲームにつきものの「慣れてからが本番」という弱点もある。逆に言うと、こうしたところが気にならないなら、きっと楽しんでもらえると思う。現在(2013年)はやや入手難のようだが、機会があったら遊んでみてほしい。
……よかったら、一緒にサーキット帰りにやりましょうか?